根付とは?

根付とは? 根付は、実用本位のものは太古の神話の時代から日本に存在しますが、実用性だけではなく装飾的な要素の色濃い根付は和装文化があってこそ生まれた、400年余りの歴史を誇る日本独特の装身具です。

その範囲は、実用重視のものから芸術性の非常に高い作品まで、様々です。


江戸時代の根付の特徴

1、手に触れる芸術品。
根付の寸法は3cm前後から15cm程度の大きさで調度品ではなく、装身具として制作されております。つまり視覚的な美しさだけではなく、そのとき、衣服を傷つけない配慮はもちろんのこと触れた時の心地よさまで計算されてつくられております。現在では携帯して楽しめる芸術品として世界的に人気があります。

2、どんな根付にも必ず紐通し(ひもとおし)
根付は印籠や煙草入などの提物をきものや袴の腰周辺におびるときに使用しますので組紐や革紐などを通すことができるよう工夫されています。その穴を紐通しと呼びます紐通しの美しいデザインは根付ならでは楽しみです。

3、秘められた縁起の数々
根付のデザインは実に多様ですがそれらのほとんどは単純な写実ではなく、伝説やことわざ、不老長寿や福をよぶ縁起図や魔除けになる図などを表現しています。デザインに秘められた意味を探ることは、根付のたのしみの大きな要素のひとつです。


根付の種類

根付は形状によって、いくつかの呼び方があります

  • 形彫根付(かたぼりねつけ)
    人物、動植物、器物、風景などあらゆるモチーフがその形状のままに彫刻された根付。
  • 面根付(めんねつけ)
    能狂言、伎楽など、舞台芸術で使われていた伝統的な面がモチーフ。ユーモラスなものも多い。
  • 饅頭根付(まんじゅうねつけ)
    その名の通り、饅頭の形をした、円形で平らな根付。
  • 鏡蓋根付(かがみぶたねつけ)
    饅頭と同様のに平たい形ですが、中が空洞のボウル状に蓋(金工の作品が多い)が付いていているもの。
  • 柳左根付(りゅうさねつけ)
    徳川将軍家お抱えの挽物師、池嶋立左の名前が由来のもので、挽物の技工で制作された香合のような形状の根付。明治以降は、それに透かし彫りがなされたものが特に柳左根付と呼ばれるようになる。
  • 差し根付(さしねつけ)
    帯や袴紐の間に挿して使われます。そのため、長くて平坦な形状のもの。
  • 灰皿根付(はいざらねつけ
    別名火叩根付(ひはたきねつけ)ともいう。煙管で喫煙した際に、灰をおとす機能的な根付。
  • 箱根付(はこねつけ)
    本体と蓋に分かれて作られており、紐通しは蓋裏と本体の底に備えられている。

根付の素材

最も一般的なものは象牙、木材(黄楊、黒檀、紫檀、黒柿、桜、ゆすら梅、いちい 他)と鹿角です。その他にも、漆、金属、貝、珊瑚、鯨歯、鯨骨、セイウチ牙、猪牙、焼物、江戸ガラス、籐、竹、木の実(胡桃、タグアナッツ他)など枚挙にいとまがありません。珍しいところでは、サイチョウのくちばし、珊瑚、一角(イッカククジラの歯)、琥珀、うもれぎなどもあります。


根付の題材

江戸時代の根付の特徴 根付をとりつけた印籠は、もともと服飾品であるとともに薬入れに用いられていた関係もありそれにつけられた根付も不老長寿に関係するモチーフが多くみられます。また武家社会では儀式に用いられましたので、根付もそのような場にふさわしい中国や日本の古典にちなんだ貴族趣味の題材も見られます。

また武家だけではなく、あらゆる階級の日本人がたしなんだと推定される煙草の携帯用の入れ物(煙草入、トンコツ)にも根付はとりつけられましたので、ユーモアのある図柄もみられます。日本は古い歴史がある国であるゆえ、さまざまな祭式や儀式が各地で四季折々に催されますので、根付のバリエーションは広がりがあります。

十二支の干支の中では鼠、牛、虎、馬、猿、犬など、架空の動物ではもっともポピュラーな獅子以外には、麒麟、鳳凰、河童、蓑亀なども見られます。植物系では、蕪、銀杏、枇杷、橘、桃、筍や茸、花では牡丹、菊、梅、桜、など、単体でなくても題材に応じてあしらわれたものが数多くみられます。二股大根や松茸など春画的な含蓄のある根付であることが多いでしょう。


人物根付

Netsuke subjects市井の人物図がすぐれた作品が多くみられることは、根付芸術においても特筆すべきことです 農民、漁師、海女、按摩師、物売り、力士、鼠捕り、猿まわしなどの芸人など実にさまざまな職業人物がみられます。異国人物では和蘭人や韃靼人、中国人などの根付は、十七世紀から十八世紀にかけて特に優れた作品が多く見受けられます。

もう一つの重要なカテゴリでは、、仏系では七福神の中では特に、布袋、恵比寿、大黒、福禄寿、寿老人が目立ちます。達磨や仙人、羅漢なども人気があったようです。

大陸から渡ってきた伝説や神話の登場人物たちで、鍾馗や関羽などが突出して多く見られます。日本古来の題材は能楽と歌舞伎の演劇や民話をベースにしたものがあります。天狗と河童はこの分野の人気の題材です。

このほか茶道用具、兜、籠、硬貨、御鈴など、数え切れないほどの静物が刻まれました。
春画根付はエロティックな主題を、時には明示的に表現されていますが、多くは隠されているか、または示唆されています。


根付師

Netsuke carving centers 根付師の数は、それこそ題材の数ほど存在しましたが初期に活躍した偉大な根付師は作品に銘をいれなかったことが多く、その後何人かは1781年刊の、初めて根付師を記録した本、装劍奇賞に名を挙げられたことにより、その存在が広く知られることになりました。有名な彫師では正直、友忠、我樂などでしょうか。


根付の歴史は通常三期に分かれています。

  • (古根付が制作された)十七世紀から十九世紀半ばまで
    多くの海外蒐集家にとって根付の黄金時代は大型の力強い印象の根付が制作された十七世紀と十八世紀と言えるでしょう。この時期は吉永、岡友、岷江、爲隆、そして富春のような装劍奇賞に記載された根付師が栄えました。しかし多くの国内蒐集家にとっては江戸時代後期(十九世紀初〜中旬)の根付師が好まれるようです。これは当時の豊かな商人が印籠や煙草入れなどの豪華な装飾品を身に着け彼らの富を誇示した時代で、これらに付随した細かい彫りが施された根付はその品質とは裏腹に壊れやすく、破損しやすい。この時代の有名な根付師:亮長、豐昌、虎渓、一貫、雪齋、音満、友一。

  • 近代:明治時代から第二次世界大戦(1868〜1945)の終わりまで
    明治維新後、政府が伝統的な着物を洋服で置き換えるなど、より現代的な生活様式を採用することを強く勧めた結果、提物と根付の需要が急激に減少しましたが、同時に多くの外国人が日本を訪れ始め、この小さな芸術品を発見した頃でもありました。このことは根付師にとって外国、とりわけヨーロッパに根付を大量輸出できるきっかけとなり、彼らに大きな安堵をもたらしました。残念なことに出荷用の根付の品質は従来の作品に比べ低下し、少数の根付師のみ伝統的な制作方法で品質を保っていました。これら高品質な根付は、本来の用途とは違うとはいえ、国内外の蒐集家の間で傑出した作品として高く評価されています。光廣、東谷、谷斎、懐玉齋、森田藻己、藻晃、玉藻などの根付師が最も賞賛された時代でした。

  • 現代:その後(1945年以降)
    第二次世界大戦中、根付の需要は下がりましたが、終戦後復活。そのころ彫られた根付のほとんどは工場で大量生産されたものであり、(製作者や所有者の)個人的な思い入れがある作品を除くと単なる土産品とみなされるものが多いです。1970年代、当時日本在住であったレイモンド・ブッシェル氏は根付師達に高品質の根付を再度、世に出すため彼らに伝統的な技法を用いるか、現代的なデザインを試みることを勧めました。その何名かは国内外で名をあげました。雅俊、柳之、美洲、英之、寛玉、Clive Hallam、Natasha Popova、Leigh Sloggett、Sergey Osipov等々。

根付の流派

根付師は何世紀にもわたり、それぞれ独特のスタイルを持つ国内の各地域に留まる傾向がありました。重要なところでは(その地域出身の有名な根付師):京都(正直)、大阪(懐玉斎)、博多(音満)、高山(亮長)、石見(富春)、名古屋(爲隆)、岐阜(友一)、江戸儒教)、伊勢(正宗)、丹波(豊臣)などがあります。


根付の研究と文献

前述したように日本の根付師が最初に登場したのは1781年に発刊された、稲葉新右衛門著の装劍奇賞であり、その後、出版されたのが1943年の上田令吉による根付の研究です。

欧州では、A. Brockhaus(1905)、S.Bing(1906)、W.L. Behrens(1912)らが根付についての書籍を出版したことでもわかるとおり、根付についての研究が二十世紀初頭から始まりました。以来、R. ブッシェル、N. ディヴィー、A. デュクロなどの著作には日本語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語に出版されているものもあります。

根付に関連する書籍では、ベストセラーにもなったエドマンド・ドゥ・ヴァール著の琥珀の眼の兎がもっとも記憶に新しいところです。

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